アドラー心理学における「全体論」について教えてください。

Category: 基本前提

アドラー心理学の「全体論」とは、人間を心や身体、理性や感情といった部分の寄せ集めではなく、それらすべてが相互に関連し、ある目標に向かって機能する「分割できない統一体」として捉える考え方です。

アドラー心理学における「全体論」とは、人間を身体の諸組織やそれらの機能、あるいは理性と感情、意識と無意識といった様々な要素の、単なる寄せ集めだとして考えたり、あるいは特定の部分が残りの部分を一方的に統括していると捉えるのではなく、それらが相互に深く関連し合って、分けることのできない有機的な統一体として機能していると捉える考え方です。人間の行動や感情はもちろんのこと、時として身体症状でさえも、その人全体の持つ目標やライフスタイルと切り離して理解することはできないと考えます。

そのため、例えばある人が抱える不安という感情は、その人が無意識的に設定している目標(例:失敗してはいけない、嫌われてはいけない等)と関連して生じことがあると考え、また身体的な不調についても、心理的な問題の表現である可能性を考慮して捉えるのです。このようにして、個人を常に全体として捉えようとするのが、アドラー心理学の基本的な立場です。

なおこれは、身体や精神の不調が、身体に備わった諸器官や諸機構の不調から起こることを否定するものではありません。アドラー心理学は様々な医療分野の知見や、そこで標準治療とされているものを否定する立場にありません。特に身体の調子の異変を自覚した場合は、心の問題を考える前に、まずは早めにかかりつけ医あるいは専門医療機関で受診されることを強くお薦めします。