AIJの目指すこと

 一般財団法人野田俊作顕彰財団 Adler Institute Japan(AIJ)は、故・野田俊作の為したアドラー心理学に関する事業に敬意を表し、その思想と理論を次世代に継承することを目的としています。アルフレッド・アドラーからルドルフ・ドライカースへ、ドライカースからバーナード・シャルマンへ、シャルマンから野田俊作へとアドラー心理学が手渡しされてきたことは奇蹟ともいえます。野田俊作が正統に継承して遺した知的財産を、それを必要とする多くの方々にお伝えしていきたいと願っております。

 我々は、あまたあるアドラー心理学という名のものが、野田俊作から学んだアドラー心理学の学問的な枠組みの外にあるか内にあるか、その範囲を明らかにすることが大切だと考えています。彼我を分かつ違いを明らかにし、建設的な討論を繰り返すことによってこそ、いつの時代にも学問は進化してきたと思うからです。そしてAIJでは、野田俊作という師から学んだアドラー心理学の範囲を厳しく意識し、これを守り伝えていきます。

 野田は、普及活動に忙しくて論文を書く時間がないことを嘆きつつ、また「まるで泥の中に種を蒔いているようだ」と生徒らを叱咤しつつ、アドラー心理学のプロバイダーを養成することに全力を注いでいました。「でも、そんな泥の中からも、中には芽を出して花を咲かせてくれる人もいるんです。だから私はその人たちのために私の仕事を続けなければと思うんです」とよく言っていました。
 弟子は師を乗りこえるために、師の思想を理解し、師の学問を極めなければなりません。アドラーと、アドラーの思想を継いだ師の理想に思いを馳せるとき、我々はその道程の果てのなさに眩暈を覚えます。なぜなら我々の足元は現代の深い泥でぬかるんでおり、このぬかるみは科学というものにまだ希望を抱くことのできたアドラーの時代よりも、さらに深いと思えるからです。

 やがて我々の学びが深まるとき、いつか野田俊作という師を乗りこえて、アドラー心理学に新たな発展の一石を投じる日がくることを信じたいと思います。ちょうど若き日の野田俊作が「われわれアドレリアンの使命は、アドラーを乗りこえることである。」(1984)と宣揚したように。

 蓮の花は、一本のか細い茎から伸びているのではありません。泥の中の太くて強い地下茎がたくさんの花を支えています。我々ひとりひとりの力は小さいですが、野田俊作の遺した学問を、野田俊作を知らない人々に手渡す地下茎になろうと思います。そうすればきっと、新たな美しい蓮の花々が咲き続けるに違いないからです。

                                        AIJ理事一同