Passage(パセージ)・Passage Plus(パセージ・プラス)

 『Passage(パセージ)』と『Passage Plus(パセージ・プラス)』は、アドラー心理学の理念と豊かな教育実績が結びついた、育児学習コースです。

 『Passage』という名称は、Parent Study System on Adlerian Group Experiences の頭文字をとって名付けられました。同時に「通り道」という意味もあります。メンバーみんなで、しあわせな育児への「通り道」を一緒に歩んでいこう、という願いが込められています。

 各コースは、AIJ認定パセージリーダー/パセージ・プラスリーダー資格を持つリーダーにより、全国各地で随時開催されています。開催は対面形式です。主な参加対象は、3歳から中学生くらいのお子さんの保護者の方、または、子どもとかかわるお仕事をされている方となります。それ以外の方のご参加は、各コースのリーダーにご相談ください。

 これまでの子育ては「ほめる」ことと「しかる」ことを主な方法にしていました。最近は「しかる」方は批判されて「ほめて育てる」というのも流行っています。

 けれど、『パセージ』で提案している育児は、「ほめない、しからない」育児です。

 それでほんとうに育児ができるのか不安に思われるかもしれませんが、日本中、いえ、世界中でこの方法で子育てをしてとてもうまくいっています。

 キーワードは「一緒に育つ」です。

 「親が子どもを育てる」という関係から、「親子で話し合って一緒に育っていく」という関係に気持ちを変えると、ほんとうにびっくりするくらいに親子が仲良くなり、しかも子どもは自立し、社会と調和して生きる人に育っていきます。

 ぜひ『パセージ』に参加されて、しあわせな親子関係を築いてください。

野田俊作
パセージ受講者からの声
京都府S.I
京都府S.I

下の子が生まれ、上の子にイライラする機会が増え悩んでいたときに知ったパセージ。
子育てに対する考え方が変わり前向きに息子のことをみられるようになりました。
不適切な行動に注目しない。正の注目をすることに日々努力しています。
期間があくとすぐ忘れてしまうので今後もフォロー会に参加して学んでいきたいです。

神奈川県 匿名
神奈川県 匿名

パセージに出会い、仲間に出会い、自分は一人じゃない、生きることは楽しい、どんな回り道も糧になっていくのだと初めて思えました。
子育ての道のりは長いですが、これからも細―く長―く続けていけたらと思います!

神奈川県 匿名
神奈川県 匿名

パセージ受講前は、子どもの心にも、私の心にも問題があると悲観していましたが、パセージ受講後は、子どもと私のやり取りに問題があったのだと気づき、子育てや自分自身の心に大きな変化をもたらしてくれました。

神奈川県 S.S
神奈川県 S.S

今まで自分なりには一生懸命子育てしていたつもりでしたが、子どもとうまく嚙み合わないことが多くありました。それがなぜなのかどうすれば良いのか見当がつかず、自分自身を責めてしまう日々がつづいていました。
 そんなときにパセージを受けました。学んでいるうちに、子どものためだと一生懸命になっていたことが、実は子どもを苦しめる結果につながっていたのかもしれないと思い当たることが、多くありました。(中略)
 パセージを学んだおかげで自分を責めることがほとんどなくなり、肩の力が抜けて、子どもと関わるのが楽しくなりました。
 これからも、パセージで出会った仲間と共に学びあっていきたいです。パセージに出会えたことにこころから感謝しています。 

三重県 Y.Y
三重県 Y.Y

私がパセージを受けて一番良かったことは、「別れてもいい」と思うほど関係が悪かった夫と笑顔で楽しく話せるようになったことです。まさか子育ての講座を受けて夫との関係も良くなるとは思ってもいませんでした。”相手を変えようとするのではなく、まずは自分が変わる”ことの大切さを学びました。さらに、パセージは自分に”変わりたい”って思わせてくれる講座でした。今では夫もパセージを学び、同じ方向を向いて育児ができることを嬉しく思っています。
まだまだ、夫とは揉めることはありますが(笑)、イライラしても夫の良いところに目を向けたらイライラが消えたり(なかなかイライラが消えるまで時間がかかることもありますが)、冷静に話し合えたり、前より本当に良くなったと思っています。
その他、パセージを受けて良かったことは、子どもと過ごす時間が前より楽しくなったこと、その場しのぎでなく、目的をもって子育てをできるように頑張りたいと思うようになったこと、自分と子どもとの関わりを振り返るようになったこと、少し冷静に自分の感情に向き合えるようになったこと、子どものいいところに前より気づけるようになったこと…たくさんあります。さらに、アドラー心理学に出会えたこと、パセージ桑名の仲間に出会えたこと、学ぶことが楽しいこと、これからも学び続けられること、嬉しく思っています。

三重県A.T
三重県A.T

私は妻が先にパセージを受講していて、その影響もありパセージを受講しました。それまでは父子関係にそこまで困ってなかった、正確に言えば子育ては妻に任せっきりになっていました。 私は誉めて、甘やかせていた方だと思います。今から思うと、子どもが王様で私が召使い?! その為、夫婦の間に子育ての軸がありませんでした。パセージに出逢ってからは夫婦で子育ての目標に向かってブレない軸を持つことができました。 私の/あなたの行動は勇気づけになっているかと夫婦で点検しながら日々暮らしています。 パセージを受講後は子どもとの関係性だけでなく、夫婦の関係性も更に良くなりました。

Passage(パセージ)のカリキュラム

 『Passage(パセージ)』(1998年開発)は、8週間かけて全8章(各2時間30分)を学びます。『パセージ』はアドラー心理学に基づく育児の、入門編といえるでしょう。子どもを勇気づける基本的な姿勢を、実践的に学んでいただくことができます。1回の受講でめざましい効果を体感する方がたくさんおられますし、何度も再受講していただくことで、新たな発見と学びを体験できるようにもなっています。コース終了後も各地でフォロー会が開催されており、継続学習ができるように工夫されています。

 『Passage Plus(パセージ・プラス)』(2012年開発)は、6週間かけて全6章(各3時間)を学びます。『パセージ・プラス』は『パセージ』を受講した後にフォロー会などに参加して、おおむね6か月以上『パセージ』で提案する育児を実践した方に受講していただく、『パセージ』のアドバンストコースです。アドラー心理学の育児は、『パセージ・プラス』を学ぶことではじめて全体を理解していただくことができます。子どもをより積極的に勇気づけ、親子が話し合い協力して一緒に成長していく育児の、具体的な方法を効果的に学び、実践することができます。

 それぞれのコースでは、リーダーとメンバー合わせて6~14名でグループを作り、そこでメンバー各自が、日々の育児の現場で実際にあったできごとを持ち寄って、皆でテキストに沿って解決策を相談します。やってみると分かりますが、子育ての悩みは、想像以上に共通することが多いです。メンバーが皆、我が家も同じだと感じ、時には場面の再現をして子どもの立場に立ってみる体験をしながら話し合います。グループ全体が、誰かの困ったできごとを他人事でないと感じ、親身になって、貢献的に相談しあう場となっていきます。そうした体験が、まさにアドラー心理学の共同体感覚の体験なのです。

これらは、独学やオンライン講座では体験できないものです。子育てとは、現場で起こるリアルなものです。本で得た知識や、オンラインで聞いた話をいくら頭の中でシミュレーションしても、子育ての現場は、その通りには動きません。またオンラインでは、会話は、講師と受講者の間ばかりになりがちです。

 一方、リアルな対面講座には、メンバー同士のふれあいや会話があります。『Passage(パセージ)』『Passage Plus(パセージ・プラス)』では、対面参加でのメンバー同士のふれあい、そこで協力しあって仲間とともに問題を解決していく体験、それらの感覚をそのまま地続きの日常に持ち帰って子育ての場で再現していただくことを大切にしています。

 すでに現在では、そのような『パセージ』の子育てで育った子どもたちが親になり、親になってからあらためて『パセージ』を学び、自分の子どもを『パセージ』で育てています。これからも、多くのみなさまの『パセージ』へのご参加を、心よりお待ちしております。

 なお、詳しい内容や、各コースについてのお問い合わせやお申込みは、各担当リーダー(またはコースの世話人)までお願いいたします。

Passage(パセージ)の歴史と、目指していること

 ここで、パセージが現在の形へ至ったその通り道(歴史)と、パセージが目指していることをご紹介いたします。

 アルフレッド・アドラー(1870~1937)は、世界ではじめて、児童相談所を作った人物としても知られています。アドラーは医師としてオーストリアのウィーンで開業していましたが、1916年からは第一次世界大戦に軍医として従軍しました。この戦争は、アドラーにとっても非常に凄惨な体験だったようです。オーストリアの敗戦後、ウィーンの街では、非行に走る孤児や、育児に困る母親が非常に増え、社会問題となっていました。アドラーは、戦争のない社会をつくらなくてはならない、人々が暴力や競い合いではなくて、話し合いで問題を解決し、お互いに協力しあって暮らす世の中にしたい、と考えるようになりました。そのためには、どんなに社会制度を改革してもだめで、まずは人間が、自分たち自身の暮らし方をそのように変えていかねばならない、と考えたのです。 そこで、次の世代の生き方、暮らし方に深く関わっている育児と教育に関心をもち、熱心に活動をはじめました。児童相談所の設立もその活動のひとつでした。

 このように、アドラー心理学では、心理学といっても神経症などの治療だけにとどまらず、世の中の人々が、家庭や学校、職場や地域などで、協力しあって幸福に暮らしていくことに役立ちたい、と考えます。アドラーの弟子ルドルフ・ドライカースも、専門家だけでなく一般の人たちが、より広く日常生活でアドラー心理学を実践するよう奨励しました。ドライカースのそうした勇気づけは実を結び、一般の母親たちが彼のもとでアドラー心理学を学ぶようになり、そこで育児のテキストを用いて、親のためのグループ学習会を開催するようになりました。これを伝統として、その後もアドラーの弟子、孫弟子等の後継者たちにより、アドラー心理学に基づいた育児学習プログラムが多数開発されて、世界各地に広がっていったのです。

 さて野田は若くしてアドラー心理学と出会い、1982年にシカゴのアルフレッド・アドラー研究所に留学し学んだ後に、アドラー心理学の育児プログラムの日本への導入を試みました。しかし欧米と日本では、育児や暮らしをめぐる常識にさまざまな違いがあります。欧米のプログラムをそのまま導入したのでは、それらの違いが障壁となって、アドラー心理学本来の教育方針が伝わらない可能性がありました。そこで野田は、日本の育児に合わせて、『Passage(パセージ)』の前身となる新しいプログラムを開発しました。

 たとえば、ドライカースは「Whose responsibility? 誰の責任か?」と問いかけます。しかし、ドライカースのいう「責任」とは、いわゆる日本的な意味での、いったい誰が責任をとるのか、ということではありません。「Responsibility 責任」という言葉は、語源をみれば response-ability であり、直訳すると「応答する能力」です。たとえば、学校で宿題が出たら、やるにしろやらないにしろ、子どもは教師の要請に応答しなくてはなりません。あるいは大人でも子どもでも、 体調が悪くなれば休むことにするか 、もう少しがんばるか、まず自分で考えて、状況に対処しなければなりません。そういった、日々や人生のなかで生じた課題に自分で「応答する能力=response-ability」を学んでもらおうというのが、もともとのドライカースの問いかけなのです。

 ところが日本では、子どもの行動や健康管理について「誰の責任か?」と問われたときに、もっぱら親の責任だと考えて子ども自身の「責任」を考えない、といった風潮や社会通念があると思います。そこで、野田はこの「誰の責任か?」という問いを、「誰の課題か?」という問いに翻案しました。そうすることで、親も子も基本的に、それぞれ個人にふりかかる困難や課題に対して、自分自身で応答して、自分自身で解決する「責任」がある、ということを理解しやすくなりました。いわゆる「課題の分離」です。これは日本の事情に合わせての、野田ならではの工夫のひとつです。

 しかし、人間は自分ひとりですべての課題を解決できるわけではありません。そもそも、人々が協力しあってともに暮らしていくことが、アドラー心理学の目標です。そのためには、他者と協力して問題を解決する方法を学ぶことが大切です。そこで、野田の開発した育児プログラムは、先に、子どもの課題と親の課題とを分ける「課題の分離」を経たうえで、分離したそれぞれの課題を、親子が協力して「共同の課題」として解決していく過程を体験的に学べるように組み立てられています。

 『Passage(パセージ)』は、そのようにして長年続けられてきた子育てプラグラムを、1998年から2000年にかけて全面的に改良することで誕生しました。野田は新しい工夫として、コースの冒頭に、アドラー心理学の子育ての軸となる理念を掲げました。ご紹介しますと、

  • 行動面の目標:「自立する」「社会と調和して暮らせる」
  • 心理面の目標:「私は能力がある」「人々は仲間だ」

というものです。

 ここでの行動面の目標とは、アドラーが提唱する理念「共同体感覚」について述べたものです。「共同体感覚」とは、親子、家族、友人同士、さらには広く世の中の人々が、苦楽をともにする仲間として、助け合い、お互いに貢献しながら暮らしていくための理念であり哲学です。 野田はこれを分かりやすく、「これはみんなにとってどういうことだろう。みんながしあわせになるために私はなにをすればよいだろう。」と考えることである、と定義しました。

 コース中は、何度もこれらの目標にもどって、私たちの子どもへの対応を確認します。親から子どもへの実際の行動とその目的が、ついうっかり、親が子どもを支配する競合的なかかわりとなっていないか、親子が対等で平等な関係で、協力的に問題解決する方向へ向かっているのか、つまり、親子がともに「共同体感覚」の方向へ向かっているかどうかを、何度もここにもどって確認するのです。

 そして、次いで2012年に開発した『Passage Plus(パセージ・プラス)』について、野田俊作は次のように述べています。

 『パセージ』は、「アドラー心理学を学びに来る」人ではなく「育児を学びに来る」人を前提にして設計されているが、『パセージ・プラス』は明確に「アドラー心理学の育児を学びに来る人」を前提にして設計されている。そこでは、エピソード分析だけでなく、アドラー心理学の理論と思想と技法について、育児の上で必要なすべての技術と知識が伝達されるようになっている。

 これでようやくアドラー心理学の育児の全貌を日本に紹介できたと思っている。後は、ひとりでも多くの人に実践していただきたいだけである。

野田俊作

 このようにして、アドラー心理学育児のエッセンスが長年多数積み重ねられて誕生したのが、『Passage(パセージ)』と『Passage Plus(パセージ・プラス)』なのです。

 「パセージ®」は、 一般財団法人野田俊作顕彰財団 Adler Institute Japanの登録商標です。

近日中のパセージ開催予定
近日中のパセージ・プラス開催予定