「ライフスタイル」とは何ですか?どのように形成されるのですか?

Category: 主要概念

アドラー心理学の「ライフスタイル」とは「性格」や「人格」にあたるもので、遺伝や環境に一方的に決定されるのではなく、子ども自身が家庭環境やきょうだい関係に影響を受けながら、試行錯誤や模倣などを通じて主体的に「選択」して形成するものです。

「ライフスタイル」とは、一般的に使われる「性格」や「人格」に相当する、アドラー心理学の中心的な概念です。アドラーが「性格」や「人格」という言葉を使わなかったのは、「性格」という言葉が持つ遺伝決定論的なニュアンスと、「人格」が持つ、逆に遺伝的要因を軽視しすぎるニュアンスの両方を避けるためでした。また、アドラー心理学では、ライフスタイルは遺伝や環境に影響はされるものの、それらによって一方的に決定されるわけではないと考えます。この独自の立場を明確にするために、「ライフスタイル」という言葉が選ばれました。

次に、ライフスタイルの形成過程についてですが、ライフスタイル形成における最も重要な原則は、子ども自身が主体的な「選択」によってライフスタイルを選び取るという点です。子どもは以下の3つの方法を通じて世界を学び、自らの生き方(ライフスタイル)を能動的に構築していきます。

  • 試行錯誤:様々な行動を試し、その結果(親や兄弟に受け入れられたか、願いが叶ったかなど)から、うまくいく方法を法則として自ら発見します。
  • モデル(模倣):親や兄弟、物語の登場人物など、他者の行動を真似ることで学びます。
  • 言葉:親や教師から話を聞いたり、本を読んだりして、言語を通じて学びます。

いずれの方法においても、子どもは教えられたことをそのまま受け入れるのではなく、自分が学びたいことを選び取って、自身のライフスタイルを形作っていきます。子どもがライフスタイルを「選択」する上で、特に大きな影響を与えるのが「家庭環境」と「きょうだい関係」です。

「家庭環境」は人間が人間らしく育つための最も基礎的な共同体であり、家庭を破壊することは健全なライフスタイル形成を著しく阻害します。

「きょうだい関係」ですが、アドラーは、親よりもきょうだいの影響を重視しました。なぜなら、いってみれば親は獲得すべき「賞品」であるのに対し、きょうだいは同じ賞品を奪い合う「競争相手」に位置し、生き方の作戦(ライフスタイル)を立てる上でより決定的な影響を与えるからです。アドラーによると、誕生順位によって以下のような典型的な傾向が見られるとされます。

  • 第一子(長子):親の愛情を独占した後に王座を奪われる経験から、賢さや能力を誇示する、あるいは乱暴になるといった作戦をとる傾向があります。
  • 中間子:注目を独占した経験がなく、家の中より外に活路を見出したり、人間関係の中で自分の位置を確保するために工夫を凝らしたりします。
  • 末子:常に年長者に囲まれ、可愛がられる術を身につけますが、主体性に欠ける可能性があります。
  • 一人っ子:末子に似ていますが、競争相手がいないため、許される範囲の「限界」を知らない傾向があります。

なお、誕生順位によるこうしたライフスタイルの傾向は、単に一つの例であって可能性にすぎないものです。個人のライフスタイルはその人独特のものであるが故に、誕生順位以外の様々な情報を知ることによってはじめて個人のライフスタイルを理解することができるのだとアドラー自身が述べています。

たとえば、性別やきょうだい間の年齢差、個々の子どものリソースによってもまったく違ってきます。親の影響としては、親の持つ価値観すなわち「家族の価値」や、家族の価値を伝える方法としての「家族の雰囲気」があります。また、家庭以外でライフスタイルに影響を及ぼす要因としては、学校や、その他ライフスタイル形成期に子どもが所属する集団や、子どもが接する様々な情報(メデイア、出版物、インターネットなど)も、ライフスタイル形成に影響を与える要因となります。