他の心理学(フロイトやユングなど)の理論と、アドラー心理学はどのように整合性を持たせるのですか、あるいは対立するのですか?

Category: その他の疑問

フロイトとは原因論と目的論など臨床理論の原理が全く異なり、内容は整合せず、互いに混ぜ合わせることはできません。むしろ認知行動療法などが理論的には共通部分を持ちますが、治療戦略が異なるため臨床現場での動きは相容れません。

心理学理論は大変に多岐にわたり、そのすべてについては言及できないため、おおむね例に出された範囲内で述べさせていただきます。

フロイトやユングの理論とアドラー心理学との関係性については、人間の無意識を認める点は共通しますが、特にフロイトとは、臨床理論面においてほぼ全面的に対立すると考えられます。アドラーは元々フロイトの精神分析運動の初期メンバーでしたが、後に袂を分かつことになりました。原因論や性的欲動を重視するフロイトに対し、アドラーはそれらに真っ向から対立するともいえる、目的論、劣等感と補償、社会的関心(共同体感覚)を重視しました。このように、それぞれの臨床理論は原理が全く異なる体系のため、内容は整合せず、互いに混ぜ合わせることはできません。

なお、臨床理論面においてアドラー心理学によく似たものとしては、アルバート・エリスの『論理情動療法 Rational Emotive Therapy』やアーロン・ベックの『認知行動療法 Cognitive Behavior Therapy』をあげることができます。それらは個人の主体性を認めており、目的論的で全体論的でもあります。また社会統合論のなかで対人関係論が、仮想論のなかでは認知論が共通するともいえます。しかし治療における戦略が全く異なるため、臨床の現場での動きは相容れないものとなっています。