精神疾患や発達障害を持つ人の困難も、本人が「そうあることを選んだ」結果だと解釈するのですか?

Category: 自己決定性・ライフスタイルについて

いいえ、疾患や障害そのものは生物学的要因などによるもので本人が選んだなどとは解釈せず、まず医療的対応を優先した上で、アドラー心理学はその人が困難な状況でも可能なことを生かしてどう生きていくかという点に関わります。

人が自ら、精神疾患や発達障害そのものを「選んだ」などとは解釈しません。それらは基本的に遺伝をも含む生物学的要因によるものであり、前者については環境要因も複雑に関与します。そしてそれらを抱える人々の困難は、まず何よりも疾患や障害が直接招いたものであって、そこへさらに、世の中からの理解や、ケアの手厚さなどの社会的要因が少なからぬ影響を与えます。治療や療育の成果にはもちろん本人の寄与が少なくありませんが、だからといって、困難の現状が本人に起因すると考えるのは本末転倒な話です。

精神疾患や発達障害の疑いがあるときは、アドラー心理学などのカウンセリング対応よりも前に、医療機関での精神科医による診断・治療と、必要に応じた心理専門職による対応が優先されます。精神疾患や発達障害を持つ人の困難についてアドラー心理学が関わるのは、困難な状況の中でも、その人が自分に可能なことを生かして人々とともにどのように生きていくのか、という点にあります。

実はアドラー自身が生まれつき難病である「くる病(骨軟化症)」を患い、4歳まで歩けないなどの困難を抱えて育ちました。にもかかわらず、アドラーはその困難を乗り越えて自ら医師となり、さらにアドラー心理学を提唱して人類に貢献しました。彼と同じ努力をすれば彼のようになれるとは考えませんが(むしろ、ひとりひとりの状態や背景に合わせた個別化された取り組みが必要です)、しかし、彼のアプローチのもつ豊かな可能性を、他ならぬ彼自身が示してみせている、とはいえるように思います。