職場の人間関係に悩んでいます。アドラー心理学の観点から何かアドバイスはありますか?

Category: 現代社会とアドラー心理学

アドラー心理学では人間関係について、機能重視の「ゲゼルシャフト(社会組織)」と仲間同士としての「ゲマインシャフト(共同体)」とを区別して捉えており、前者の問題であるマネジメントや業務上の困難などには対応できませんが、人間同士の揉め事といった後者の側面であれば具体的なエピソードを伺って対応可能です。

ご質問が広いため具体的なアドバイスは難しいですが、アドラー心理学の観点からのヒントをお伝えします。アドラー心理学からは、人間関係は次の2つに分類できます。

ゲマインシャフト(共同体):家族や親しい友人関係のように、自然発生的な相互理解に基づいた人間関係で、人々が対等な横の関係で協力し合うことにより成立しています。伝統的な地域社会もこちらに含まれます。仕事上での人間関係でも、自然発生的なユーザーコミュニティなどは、こちらに該当する可能性があります。
ゲゼルシャフト(社会組織):会社などのように、特定の目的のため人為的に作られた組織で、そのため機能性が何よりも重視されます。事業目的や経営上の重点項目を実現するための一定の価値観を持ち、そのもとでの序列を基本構造として成立しています。

この定義からは、職場というものは基本的に「ゲゼルシャフト(社会組織)」に該当しますが、しかし少なからぬ職場には、「ゲマインシャフト(共同体)」的な仲間意識もみられるのではないでしょうか。

したがって、職場の人間関係のお悩みといっても、大まかにいって、

  • 組織の中での上手な身の処し方や、あるいは部下を統率する上での悩み
  • 仕事仲間あるいは職場の上下関係の中での、いわゆる人間同士の揉め事についての悩み

この二通りが考えられます。このうちアドラー心理学が関わるのは後者、つまりゲマインシャフト(共同体)としての側面についてです。具体的なエピソードをお聞かせくだされば対応が可能です。

他方、前者のような社内政治の苦労や人事上の困難、顧客への対応などについては、それらはあくまでマネジメントやマーケティングの領域であって、アドラー心理学が直接に解決策を提示できる範囲にはありません。仕事上のあらゆる問題にアドラー心理学が対応できるわけではないのです。むしろビジネスの領域に無理をしてアドラー心理学を当てはめても、そもそもゲマインシャフトは機能主義的なものではありませんから、効率や合目的性の点において、概ね良い方向には進まないことと思われます。