家庭内でアドラー心理学の考え方を実践するコツはありますか?

Category: カウンセリングと応用

家庭内でアドラー心理学を実践するコツは、子どもが「自然の結末」や話し合いで決めた「社会的結末(ルール)」から自ら学ぶのを援助し、暴力など許されない行為には冷静に選択肢を示して、これらを実行できる対等で協力的な親子関係を築くことです。

アドラー心理学の育児は、単に「褒めない、叱らない」という放任育児ではありません。親が圧力をかける代わりに、子どもが自らの行動の結果を体験し、そこから学ぶことを援助するアプローチを取ります。そのための具体的なコツは以下の通りです。

1, 【自然の結末】を体験させる

これは、親が直接介入するのではなく、子どもの行動が自然にもたらす結果をそのまま体験させる方法です。

  • 親は手出し・口出ししない
    例: 夜更かしをして朝起きられない、冷たいものを飲みすぎてお腹を壊すなど。親が無理に起こしたり、先回りして注意しすぎたりすると、子どもは学ぶ機会を失います。
  • 事前の「仕掛け」が重要
    例: 小学校に入学したら「自分で起きる権利」を与え、目覚まし時計をプレゼントする。その代わり親は起こさない、というルールを事前に子どもと話し合っておきます。これにより、子どもは自分の責任として朝起きることを学びます。
  • 親は動揺せず、子どもを信じる
    子どもが失敗しても、怒ったり心配しすぎたりせず、「この経験を通じて成長する」と信じる姿勢が大切です。
  • 問いかけで学びを促す
    失敗した後に「だから言ったでしょ」と責めるのではなく、「どうしてこうなったんだろうね?」「次からどうしようか?」と問いかけ、子ども自身に原因と対策を考えさせます。「賢いことを学んだね」と締めくくることで、子どもの学びを肯定します。

2, 話し合いでルール【社会的結末】を決める

暴力や他人に迷惑をかける行為など、自然な結果に任せておけない問題については、家族でルールを決めます。

  • 家族会議で民主的にルールを決める
    親が一方的に「命令」するのではなく、「こういうルールはどうかな?」と提案し、子どもたちの合意を得る形が理想です。子ども自身が考え、納得したルールは守られやすくなります。
  • ルールは全員が守る
    「親は例外」というルールでは、子どもは納得しません。帰宅時間などのルールは、親も守る姿勢を示すことが重要です。守れない場合は、その理由を説明し、代替案(例:「夕食に間に合わない時は電話する」)を約束します。
  • 実行可能なルールにする
    まずは「お試し期間」を設けるなどして、守れるルールかどうかを確認し、必要に応じて見直します。
  • 家族会議を儀式として楽しむ
    「家族会議」と銘打って少し形式張って行うことで、ルールに権威が生まれます。深刻にならず、楽しんで行うことが長続きのコツです。

3, 【選択できない可能性】には、選択肢をきっぱりと示す

喧嘩は子どもの課題ですが、暴力のように許されない行為(=選択できない可能性)には、親が介入します。

  • 感情的にならず、2つ以上の選択肢を与える
    例: 兄弟喧嘩で手が出そうになったら、「仲良く遊ぶか、一人で遊ぶか、どちらかを選んでください」と冷静に選択肢を提示します。
  • きっぱりと実行する
    子どもが「仲良く遊ぶ」を選んだにもかかわらず再び暴力をふるった場合は、「一人で遊ぶことを選んだ」とみなし、その場から引き離します。子どもが泣いても言い訳をしても、毅然とした態度を貫くことが重要です。

4, 冷静に話し合える親子関係が不可欠

上記のコツを実践する大前提として、親子が対等な立場で、冷静に協力して話し合える関係を築くことが不可欠です。

  • 関係が未熟なうちは「課題の分離」に徹する
    冷静な話し合いが難しい間は、無理に共同の課題にしようとせず、「それはあなたの課題だから、あなたに任せます」と伝え、手を出さずに(課題の分離)、優しく注意深くこどもの行動を見守ります。
  • 関係が成熟すれば「共同の課題」に取り組める
    親子が信頼しあえる対等な仲間になれば、不登校などの難しい問題であっても、「ちゃんとした大人になる、という目的のために、一緒に何ができるか考えよう」と、協力して解決策を探ることができます。