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対人関係について
実際には全く純粋な競争社会は存在せず、協力関係と競争関係が混在しているため、一面的な「競争社会」という前提のもとで、意識だけを変えようとする努力は矛盾しており現実的ではありません。
ご質問は、アドラー心理学の「競争より協力」という主張が非現実的ではないか、というご指摘かと思います。この点を考えるには、まず「競争社会」という前提自体を検討する必要があるでしょう。というのも、そもそも純粋な競争社会などというものは存在せず、現実の社会は、競争と協力が様々な程度で混在するものだからです。
例えば、競争の激しいビジネスの領域においても然りです。自由競争は、公正なルールなしには成立しません。ルールの破壊や一方的な変更は自由競争の破壊に繋がります。そして法整備や条約の締結を含むルールの整備・維持には、人々の安定した協力が不可欠であり、そのような協力のもとでこそ自由競争は可能となります。さもなくば、いかなる勝者も存在しない、いわゆる「万人の万人に対する闘争」状態となってしまうでしょう。
ご質問が、社会のなかで「他者との比較や競争意識を完全に無くすことは現実的か」といったものであれば、私たちは「今すぐには困難ですが、将来的には可能だと考え、前に進むことはできます」とお答えします。しかし、世の中を「競争社会」と一面的にとらえた上でのご質問ならば、それは競争のみを肯定し協力しあうことを否定しながら、なおかつ意識だけ協力的に変えることは可能か、と聞いておられるのに等しく、私たちからは、そのような矛盾した努力は現実的ではなく、また、私たちの主張はそのようなものではありません、とお答えすることになります。
