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その他の疑問
その可能性はあります。謙虚さや他者への関心と尊敬を欠いたまま、理論や技法を自己正当化や他者を操作する道具として用いたり、共同体感覚を全く誤解して自分の理想ばかりを他者に求め異なる価値観を認めなければ、周囲にとっては大変に押し付けがましく感じられることでしょう。
アドラー心理学を自己中心的に誤解して用いると、そのような危険が生じる可能性があります。本来は人間行動を深く理解するための臨床理論を正しく用いずに、自分の行動の正当化のためだけに用いれば、当然のこと、自分に甘く他人にはとても批判的な理屈っぽい人と思われることでしょう。また共同体感覚を真逆にとらえて、自分が「こうなれば素晴らしい」と考えるキラキラした理想の状態ばかりを追いかけていれば、社会性の欠落した独りよがりな人物だと思われても仕方がありません。あるいは共同体感覚と共通感覚を取り違えて、ひたすら世間への同調だけを求めて異なる価値観を認めなければ、周囲にとっては大変に押し付けがましく感じられることでしょう。
野田俊作は、アドラー心理学の実践には謙虚さ、共感、そして他者への関心と尊敬が不可欠であると繰り返し説いてきました。真の共同体感覚が伴わなければ、理論も技法も、他者を支配し操作する道具や、あるいは単なる知的遊戯の手段へと転じかねないのです。
