一人ではけたよ

 保育教諭をしています。今年は1歳児担当です。10月現在、ほとんどの子が満2歳を迎えました。

「いやだ」「自分でやる!」など、自己主張も絶好調です。

元気いっぱい5月生まれのKくん。オムツの交換に行くと、二つあるうちの椅子、どちらかに座るか本人が選択。先着の子が座っていても、そこに座らなければなりませんと主張。その子が終わるまで待ちます。空くと嬉しそうに椅子に座り、オムツが替わった後、ズボンを自分で穿くんだ!と頑張ります。

まずは、はき口を両手で持って、片足を高く上げます。すると、はき口を持っていた手を放してしまい、足を入れる穴を見失います。でも諦めません。ここが彼のいいところ♡ 

さあ、気を取り直して、最初から。はき口を両手で持って、今度こそ慎重に足を高く上げ、穴をめがけて足を入れます。一つの足が入りました。よし。この調子でもう一足。順調に入ったようにみえますが、両足とも二つの穴に入ってしまいました。まるで人魚です。私は気づいても、本人が気づくまで見守ります。立ち上がると、フラフラしながら、「あれ?あれ?」とKくん。吹き出して笑いそうになるのをこらえて、「残念、足動かないね。もう一回しようか。」と声をかけます。脱ぐところから再スタートです。もう一度頑張るKくん。(ああ、手伝いたい・・・、手を貸したい・・・)そんな思いを我慢して応援。そうこうしているうちに、無事に両足が通り、立ち上がってズボンを引き上げます。でも、おしりの部分が上手く上がりません。すると、Kくん。「手伝って。」とお願いしてきました。「いいよ。じゃあ、私が後ろ持つから、Kくん、前もってね。」と私。「うん!」とにっこりのKくん。目標が一致し、共同の課題ができました。さあ、今こそ協力の時。二人で、「せーの・・・」「よいしょ!!」と声を揃えます。

無事、ズボンが穿けました!!Kくんは達成感いっぱいの表情です。

 こう上手くいく日もありますが、「手伝って」と言われる前にうっかり手を貸すと、ひっくり返って怒り、振り出しに逆戻りです。そうなると時間はさらにかかり、私の心もへとへと。

長くこの業界にいますが、いまだに失敗を繰り返し、ちびっこギャングたちと奮闘する毎日なのです。

 

私は、目をつぶっても、ズボンが穿けてしまう、人生の先輩です。でも、目の前にいる2歳の子も、一生懸命生きている大切な存在です。イライラしたり、私が手を貸せば、どんなに早いかとやきもきしたりすることもしょっちゅうありますが、いつでも相手を信頼し、尊敬し、ヨコの関係で私自身も成長していきたいです。 

(AIJエンカレッジ金沢 石川県 Y.H)