旅日記 令和5年8月1日

 アイルランドのダブリンに来ている。文子代表理事とともに、アドラーの弟子のR.ドライカースが始めたアドレリアンの夏期講座、ICASSI(International Committee for Adlerian Summer Schools and Institutes)に参加しているのだ。

 前回参加したのは2012年にリトアニアで開催された時なので、それから11年たっていることになる。その頃中心になっておられたイヴォンヌ先生やジヴィット先生、フランク・ウォルトン先生たちは今は引退され、そのころ若手だった先生がたが今は中心になって動いておられる。また、私がはじめて参加した2008年に同じクラスで勉強した人が今回はクラスを担当されていたり、そのころユースプログラム(ティーンエイジャーのプログラム)に参加していた人が大人になって、今度はユースプログラムを引率する役割を引き受けていたりする。世代交代はされているが、ICASSIのあたたかく明るく横の関係で勇気づけにあふれた雰囲気は、変わっていない。アドラー心理学の灯火はこのように確実に伝わっているのだと、うれしかった。

 ICASSIは2週間開催される。午前と午後に2時間ずつ、あらかじめ選択しておいたクラス(グループ)に分かれて月曜から金曜まで勉強する。2週目はまた別のコースをとれる。また、前半か後半どちらか1週間だけの参加もできる。

 午前中のクラスの前に全体が集まる講義の時間があって、そこでは日替わりでいろいろな先生のお話が聞ける。今朝はイスラエルのアナベラ・シャケッド先生の講義であった。「失敗を恐れて(行動を)避けること」についての講義で、すばらしくよかった。内容自体は私たちが日本で勉強して理解していることなのだが、「失敗」についてのアプローチのしかたが新鮮で説得力があり、感動的だった。
 アナベラ先生は以前はイスラエルのアドラー心理学研究所の校長先生だったが、今は研究所で教えるかたわらご自身のオフィスで心理療法やスーパーバイズなどをしておられるようである。本当に素晴らしいアドレリアンで、常にグループのメンバーと真横の位置にたちながら、必要に応じて極めてやさしく鋭い洞察をくださる、魔女の雰囲気たっぷりの素敵な女性だ。以前、アナベラ先生のサイコドラマなどのクラスをとったことがあったので、今回のICASSIの初日にご挨拶したら、文子理事と私のことを覚えていてくださった。「その後どうしていたの?」と聞いてくださったので、状況をかいつまんで簡単にお話しした。こんな風に覚えていてくださること、気にかけてくださることは本当にうれしい。思い切ってアイルランドまで来て本当によかったと思った。
 
 今回、1週目の午前はイギリスのアドレリアン、アンシア・ミラー先生の、スーパーヴィジョンについてのクラスをとった。今の日本で正統な系譜を持つ先生からアドラー心理学のスーパーヴィジョンについての講義を受けることはできないので、大変貴重な経験をしていると思う。これまで野田先生のスーパーヴァイズを受けた経験と見取り稽古を元にして、いわば見よう見まねでスーパーヴァイズをやっていたようなものだったが(みなさんすみません)、今回教わっている様々な考え方を通してスーパーヴィジョンということを整理できて、とても助けになる。日本に帰ってすぐに役に立てられると思う。

 午後はエヴァ・ドライカース先生の「職場でのアドラー心理学」のクラスをとっている。こちらに関してはまた別の日に書こうと思う。

 アイルランドは今年の夏はいつになく雨が多いのだそうで、最高気温は20℃を超えないし朝晩は寒いくらいだ。天気は曇りがちで断続的に雨が降り、傘とレインコートが手放せない。そんな天気でも、緯度が高いので夜の9時半でもまだ明るい。宿舎になっている大学寮の庭で、別の団体の若者たちがいつまでも元気に遊んでいる。「朝3時に目が覚めたらまだ彼らが騒いでいた」と話していた人もいた。私の部屋の外でも若者たちが騒いでいるが、私が眠りにつくと同時に全く声が聞こえなくなる。きっとお行儀のよい人々なのに違いない。 さて、そろそろシャワーを浴びて寝よう。

 ゆうこ