私は小児科で働いています。ある日、待合室から「注射やだー!!」と叫ぶ声が聞こえて来ました。見ると4歳の男の子が泣き叫んでいました。どうやら前日にワクチンを打って、副反応で腕が腫れたようです。その子は、また注射を打たれると思って泣いていたのです。
私は診察室からあるカードを持って男の子の所に行きました。男の子にカードを渡して「今日は、注射はしません。昨日、頑張ったんだもんね。今日は腕を見るだけだよ」と言いました。注射を怖がる子どもは沢山います。注射がある時は正直にあると言います。ない時には余計な不安がないように「きょうはちゅうしゃはしません」という文字と、注射くんに×(バツ)をしたイラスト入りのカードを持たせてあげます。
お母さんが「ね、注射はないよ」と言いました。男の子は少しずつ落ち着いていきました。その後、診察室に呼ばれると「注射やだー!」とまた泣きました。「今日は注射はしません。腕を見るだけだよ。どこが腫れたの?」と聞くと、涙を拭きながら左の腕を出してくれました。肘の下まで大きく腫れ上がっていました。「わぁ、結構腫れてるね。見せてくれてありがとう。先生にも後で見せてあげてね」と言うと、男の子はうなずきました。
医師が診察に入り、腫れが引くように薬を処方しました。「はい、終わり。注射はなかったでしょ?」と医師が言いました。するとお母さんが「ね、皆のこと信頼してよかったでしょ?」と男の子に言いました。男の子はようやくほっとした顔でうなずきました。私は「こちらこそ、信頼してくれてありがとう」と言って笑顔で親子を見送りました。ご家族にそんな風に感じてもらえたことがとても嬉しくて、スタッフみんなが笑顔になりました。私たちはこうやって日々、子どもたちやご家族に勇気づけられて仕事が出来ているのだと、しみじみ感じる出来事でした。
七飯アドラー心理学研究会 M・S
