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その他の疑問
劣等感などの陰性感情は、人間にとって普遍的かつ自然な感情ですが、劣等感をバネにすることが破壊的でなく有益な成長につながるかは、劣等感を契機とする行動とその目標が共同体にとって適切かどうかによります。
劣等感などの陰性感情は、本来、人間にとって普遍的かつ自然な感情といえます。怒りであれ悲しみであれ、それらは人が遭遇した課題つまり主観的に相対的マイナスである状況から、相対的プラスである目標へ向かうために生み出す、前向きな感情に他なりません。その意味では、人間は誰であれ「劣等感をバネに」動いている、ということができます。しかし、そこで向かおうとする目標が必ずしも適切なものとは限りませんし、それらの陰性感情をそのまま他者に向けることも概ね適切とは言えません。したがって「劣等感をバネに」進むことは、必ずしも人生に有益とはいえず、時として破壊的な結末を招くこともあります。行動の原因ではなく、そこで目標とするものや、状況への対処方法が適切であるかどうかが問われねばならないのです。
アドラー心理学では、目標や対処方法が共同体にとって有益かどうかという観点から、行動の適切さを判断します。劣等感を抱えながらやみくもに進むのではなく、劣等感を契機にしつつも、そこで共同体にとって適切な目標と対処行動を選択することで、はじめて人は共同体の一員として成長できる、と考えるのです。
