私はグループホーム型の支援施設で夜勤スタッフとして、週に数日働いています。利用者さんの部屋は、トイレ、風呂、ミニキッチン付きのワンルームで、家事をする事に慣れながら、ゆくゆくはホームを卒業して地域で自立生活を送ることを目標としています。
ある利用者さん(Aさん)との関わりで「平等の位置」に居ることの大切さを実感しました。Aさんは昨年の春に病院からグループホームへ入所された成人です。Aさんはとても社交的でお話好きですが精神的な病気を持っておられます。ホームで夕食を一緒に食べている時、日中活動の話やテレビで知った事、好きな食べ物などたくさんのお話をしてくれます。ただ、すごくご機嫌だったように見えていても、食べ終わって自室に戻った直後に、大声で怒鳴ることが度々あります。怒りの原因は、スタッフや他の利用者に言われたと思ったひと言だったり、過去の出来事を思い出したり、少し心に引っかかった事が一人になると想像を膨らませ爆発するようでした。この大声は入院中からあったのようで、長くても20分程度で収まり就寝されるのですが、ご近所や他の利用者さんに迷惑がかかってしまうので見過ごせない状況でした。
大声が出ているときに声をかけると、火に油を注ぐように症状が酷くなります。施設の対応としては爆発している時の声掛けは控えて、Aさんが落ち着いているときに話し合って一緒に考えてもらいましょうとなっていましたが、思うように進展しない状況でした。
現場対応する夜勤スタッフにとって、なかなかの悩みの種でした。こちらから話しかけると何か気に障ることになり気分を害され大声につながる事があったので、私は彼女が話す事だけ聞くようにして、無難に夜を過ごすことにしていました。
そして、今年2月のある会議のことです。ホーム全体の会議で訪問看護師さんも同席されました。私にとって利用者さんの担当看護師さんの話を聴くのは初めてでした。Aさん担当のB看護師さんは、入院中からのAさんを知る方で、B看護師さんがこれまでにしてきた具体的な対応とホームのルールを守るための具体的な方法の提案をしてくださいました。特に印象に残ったのは「彼女は長い間病院の中で暮らしていました。若い頃からの彼女を知っています。身の回りのことをすべて病院側がやっていたので洗濯や部屋の掃除、ごみの出し方など知らないことだらけだったんです。ホームに入ってから、少しずつだけど自分のできることを増やして、本当に頑張ってるなあと思います。彼女は褒められるとすごく喜びます。忠告が耳に入りづらかったり、すぐ忘れてしまうこともありますが、まずは信頼関係を作ってほしいです。」という内容の言葉でした。
ここでようやく私は思いました。「長い間病院で生活してきて、ホームに来てまだ1年も経ってないんだった。一人の苦労してきた人なんだ。本当に頑張ってるよなあ。」と。とても反省しました。
3月上旬に夕食中にAさんとこんなやりとりがありました。
Aさん:「昨日、お姉ちゃんが来てくれたの。」
私:「そうなんだ。」
Aさん:「一緒にご飯食べに行ったんだ。」
私:「いいなあ。いつも来てくれるのは○番目のお姉ちゃんだったっけ?」
Aさん:「いや、○番のお姉ちゃん」
私:「遠くから来てくれたんだねえ。そうか○番目のお姉ちゃんだと思ってた。○番目のお姉ちゃん
はどこに住んでたっけ?」
Aさん:「そのお姉ちゃんは○○に居る。✕✕✕✕✕・・・・・」この後も他の会話をしながら食事。
Aさん:食事終わって自室に戻る。自室から大声で怒鳴る。
ー翌朝ー
Aさん:「昨日は家族の事をあれこれ聞かれて嫌な気持ちになった。だから爆発した。」
私:「えっ?ごめんなさい。ごめん、ごめん!」
Aさん:(にっこり笑顔。)「そんな事よりなあ、✕✕✕・・・(他の話題に移る)」
この時の私は思いがけず素直に謝ることができました。後で考えると、「平等の位置にいたのかな」と思います。以前の私なら「家族のことを探るつもりで言ったんじゃないよ!」とか「色々ややこしくなるなあ、面倒だなあ」と考え、素直に謝ることをができず、でも爆発してほしくないから対応を思考していたと思います。取り繕った対応はぎくしゃくしていたでしょう。
ですが、平等の位置にいたと思われる私は、Aさんの言葉をそのまま受け入れることができ、すぐ謝罪の言葉が言えて、こじれませんでした。 改めて、私の心のあり方というものが相手に伝わっていくんだ、そのように思いました。
今現在のAさん、時には失敗されますがホームで楽しそうに生活されてます。Aさんは夢を話してくれます。とても素敵な夢です。Aさんがその夢に近づくよう応援していきたい思います。
Adlerjala(アドラージャーラ)鳥取 Y・N