モンテヴェルディ

 今日も特別の予定は入っておらず、変ったできごとはない。だから書くことも、普通に考えているかぎりはない。そこを無理になんとかと思って、音楽を聴いていたら、ああそうか、古い時代の音楽について書くのも悪くはないなと思いついた。

 「古い時代」というのは、ヨーロッパの17世紀前半のことだ。普通、世間の人々は、「古い」といわれると18世紀(1700年代)だと思うようだ。ということは、19世紀(1800年代)は「新しい」わけで、ベートーベンなどがその群に入る。ハイドンだのモーツァルトだのは18世紀の人だが先駆的で、19世紀的な「新しい」要素をたくさん含んでいる。

 古い時代の代表的な作曲家としては、クラウディオ・モンテヴェルディを思い出せばよい。1567年~1643年の人で、彼の時代に音楽がバロック化した。「バロック化した」とはどういうことかというと、音楽が、主旋律と伴奏旋律の対立からできていて、複数の主旋律が同時に鳴るというようなことがなくなった。もっとも、主旋律は1本だけとはかぎらなくて、いくつかの声部で掛け合いをすることが多い。たとえば、「ド・レ・ミ・ファ|ソー・ソー・ファー・ファー|ミー・ミー・ミー・レー|ドー」という旋律があったとすると、これがさまざまの調で演奏されて、聴衆はその対照を楽しむ。このような様式はモンテヴェルディ以後に主流になり、たくさんの作曲家がそういう形式で音楽を書いた。

 私の耳はそういう音楽にいちばん馴染んでいるので、いまのように病臥(かな?)すると、インターネットでよくそういう音楽を聴く。それらの音楽は、いわゆる「クラシック」の音楽ほど単調でなくて、油断して聴いておれない。ずっとある種の不安感がつきまとっていて、それが何とも言えない魅力になっていると思うのだが、他の聴衆はそうも思わないかもしれない。