古楽譜の復元(2)

 なぜそんな「古い」音楽を募集し携帯するようになったかだが、これは話が長い。私の音楽の好みがそもそも「そちら」の方に向いていたというのが出発点だ。大学生のころ合唱曲にこり始めて、一年ほどで「古楽」好みになった。古楽といっても幅が広くて、私の場合は十六世紀のフランスの合唱曲が中心であった。これはちゃんと証拠が残っていて、合奏団の指揮者をしていたのだが、三回生のとき、フランス古曲を中心にしたレパートリーを組み立てたことがある。その後、忙しくなって演奏をする機会は減ったのだが、好みは相変わらずフランス古曲だった。そのまま五十年が経って今に至ったわけだ。

 むかしは楽譜がそんなに簡単に手に入らなかったのだが、この五十年(!)の間に世の中は進み、別に店に行かなくても、インターネット経由で買えるようになった。もちろんこういう買い方では、レパートリーも偏るし、手に入らない曲もできる。しかしまあ、それはそれでよろしい。身体が「自由」でないので、楽譜屋さんまで出かけるのだって、いまはとっても大変だ。だから、簡単に手に入る範囲で満足するしかない。それだけで人生の残りの時間は十分に使えるだろう。