ターラー成就法(3)

 今日は最終回だ。主要なマントラは昨日終わったので、今日は全般的な後始末だ。

【七つのターラー菩薩讃】

聖母(マ)、無生法界住み処とし|仏母(ユム)、尊き天母よ救い主|
そは(テ)、一切有情に楽たまい|われを(ダク)、あまたの苦より守られよ|

自身(ラン)、法身なること知らずして|心(セム)、煩悩力にまとわれる|
聖母(マ)、輪廻をさまよう有情をば|仏母(ユム)、天母よ御身よ守れかし|

法(チヨ)、心相続に生ぜずば|仮説の言語を追いかけて|
悪(あ)しき教えにだまされん|仏母(ユム)、まことなる天母よ守れかし|

証悟しがたきわが心|観ても習いとなりがたく| 悪行に向く心散漫|仏母(ユム)、護念の天母よ守れかし|

心(セム)、自生の無二の智慧なれど|二元に執する習気より
なにをしようと繋縛さる|聖意(トゥク)、不二なる天母よ守れかし|

真実勝義に住んでいながら|因果縁起を知らざるままに|
知るべき実義に無知な者|仏母(ユム)、全知なる天母よ守れかし|

離戯の虚空の性相は|一切において無分別|
知らざる弟子の人々を|仏母(ユム)、円満覚者よ守れかし|

OM ĀRYA TĀRE SAPARIVARA ARGHAM PĀDYAM PUSPE DHŪPE
ĀLOKE GHANDE NEVIDYE SHABDA PRATĪTTSHA SVĀHĀ

 聖母よ、無生法界を住み処とし、仏母、尊き天母よ救い主よ、その人は一切有情に楽をくださり、私をあまたの苦から守られますように。自身が法身なること知らないで、心は煩悩力にまとわれる。聖母よ、輪廻をさまよう有情を、仏母よ天母よ御身よお守りください。法が心相続に生じなければ仮説の言語を追いかけて悪い教えにだまされるでしょう。仏母よ、まことなる天母よ守ってください。「ああそうなんだ」と証悟しがたいわが心は観ても習いとなりがたく、悪行に向いてしまう心散漫でしかありません。仏母よ、護念の天母よ、お守りください。心は自生の無二の智慧なのだが、二元的な見方に執する習気によって、なにをしようと繋縛されています。聖意よ、不二なる天母よお守りください。真実勝義に住んでいながら因果縁起を知らないままで知るべき実義に無知な者が私です。仏母よ、全知なる天母よお守りください。戯論を離れた虚空の性相は一切において無分別です。これを知らない弟子の人々を、仏母よ、円満覚者よお守りください。

OM ĀRYA TĀRE SAPARIVARA ARGHAM PĀDYAM PUSPE DHŪPE
ĀLOKE GHANDE NEVIDYE SHABDA PRATĪTTSHA SVĀHĀ

【ターラー菩薩讃】

天と非天が冠で|蓮の御足を頂きて|
すべての苦より救う母|ターラー仏母に頂礼す|

OM ĀRYA TĀRE SAMAYA|MANU PĀLAYA|ĀRYA TĀRE TENOPA TISTHA|
DRIDHO ME BHĀVA|SUTOTOKHAYO ME BHĀVA|SUPOKHAYO ME BHĀVA|
ANURAKTO ME BHĀVA|SARVA SIDDHI ME PRAYATTSHA|
SARVA KARMA SUTTSHAME | TSITTAM SHRĪYAM KURU HŪM|
HA HA HA HA HO|BHAGAVAN SARVA TATHĀGATA|
ĀRYA TĀRE MĀME MUNTSA| ĀRYA TĀRE BHĀVA MAHA SAMAYA SATVA AH|

あらゆる不足と不完全|心の愚昧の力にて|
なしたる錯誤を寛恕して|まことの成就を与えませ|

OM|ここなる御姿ともにして|輪廻の果てまでおわしまし|
無病と長寿と自在など|こよなく良きもの給えかし|

OM|御身は有情を利益して|やがては成就を給わりて|
仏の国土におもむくも|ふたたび帰り給えかし|

BADZRA MU|

わが前の智慧尊(ちえそん)自性によりて本源に帰りたまい|三昧耶尊が自心に融け入りたまう|

 天人と非天人(つまり阿修羅)が冠で(あなたの)蓮の御足を頂いて、すべての苦より救う母、ターラー仏母に礼拝します。

OM ĀRYA TĀRE SAMAYA|MANU PĀLAYA|ĀRYA TĀRE TENOPA TISTHA|
DRIDHO ME BHĀVA|SUTOTOKHAYO ME BHĀVA|SUPOKHAYO ME BHĀVA|
ANURAKTO ME BHĀVA|SARVA SIDDHI ME PRAYATTSHA|
SARVA KARMA SUTTSHAME | TSITTAM SHRĪYAM KURU HŪM|
HA HA HA HA HO|BHAGAVAN SARVA TATHĀGATA|
ĀRYA TĀRE MĀME MUNTSA| ĀRYA TĀRE BHĀVA MAHA SAMAYA SATVA AH|

 あらゆる不足と不完全、心の愚昧の力でもっておこなってしまった錯誤を許してくださって、まことの成就をお与えください。

 OM ここなるお姿と一緒に輪廻の果てまでおわしまし無病と長寿と自由自在などこよなくよいものをお与えください。

 OM あなたさまは有情に利益を与え、やがては成就を給わって、仏の国土に赴かれるのでしょうが、その後もこの世にお帰りくださいますように。

BADZRA MU

 私の前の智慧尊は自性によって本源に帰りたまい、三昧耶尊が私の心に融け入ってくださる。

【吉祥偈】

宝幢頂母自在の王|天母に供養し成就を得|上師天母に吉祥を|

 宝幢頂世界の母、自在の王である天母に供養し成就を得よう。上師天母に吉祥を。

【回向文】

わが行善の供養にて|衆生御身を成就せよ|(回向せよ)

尊者仏母よ大悲をもつ者よ|われと無辺の一切有情らの|
二障を除き二資糧円満し|無上等覚証得させたまえ|

仏果を得るにいたらぬ生々も|天人もしくは人の殊勝得て|
すべての知識を習得するを得て|障礙や悪鬼や病に冒されず|
さまざま不時の死をもまぬがれて|悪夢ももろもろ悪しき前兆も|
八難などの危難が迫れども|ただちに鎮めて除きたまえかし|
世間ならびに出世間にても|吉祥ありて円満成就して|
ますます増えてあますところなく|労せずおのずと実現せんことを|
修行にはげみ正法いや増して|いつでも御身に学んで尊顔見|
空性悟りて宝の菩提心|弦月のごと成長増大し|
甘美と歓喜の勝義のマンダラの|最美の蓮華のうちより生まれいで|
無量光仏まのあたりに拝し|親しくわれに授記をいただかん|
わが生々に成就せし天母|三世諸仏の事業をなせる母|
真白き一面二臂の寂静母|睡蓮(ウツパラ)持てる仏母に吉祥を|
勝者ターラー御身の御体と|眷属御身の寿量と仏国土|
相好美点のすべてを兼ねそなえ|かくのごとくにわれらが成ることを|

この讃嘆と祈願の力もて|われらいずこの土地にあろうとも|
病魔貧困戦乱鎮まりて|仏法吉祥増大させたまえ|
お体傷なく相好兼ねそなえ|み声も傷なく迦陵頻伽にて|
心も傷なく万法観たまえる|吉祥輝く聖母にさちあれよ|

 私の善を行なうことの功徳によって衆生が御身を成就しますように。

 尊者仏母よ大悲をもつ者よ、私とよるべのない一切有情らの二障を除き二資糧円満し、無上等覚を証得させてください。

 仏果を得るにいたらない生々も天人もしくは人の殊勝を得て、すべての知識を習得することを得て、障碍や悪鬼や病に冒されず、さまざま不時の死をもまぬがれて、悪夢ももろもろ悪い前兆も、八難などの苦難が迫ることがあっても、ただちに鎮めて除いてください。世間ならびに出世間においても吉祥があって円満成就して、ますます増えてあますところなく、苦労せずに自然に実現するように。修業にはげみ正法がますます増え、いつでもあなたに学んで尊顔を見、空性を悟って宝のような菩提心が弦月のように成長増大し、甘美と歓喜の勝義のマンダラの最美の蓮華のうちから生まれいで、無量光仏をまのあたりに拝し、親しく私に授記をいただけますように。私の生々に成就した天母、三世諸仏の仕事をなさる母、真白な一面二臂の寂静の母、睡蓮をお持ちになる仏母に吉祥を、勝者ターラーさまの御身の御体と、眷属御身の寿量と仏国土、相好美点のすべてを兼ねそなえ、そのように私もなれますように。

 これでターラー菩薩成就法の主要部分は終り、あとにマントラの威力を封じ込めるための終結部が続く。