アドラーの「目的論」とは、現在の行動は未来の「目的」を達成するために起こすものだと考えるのに対し、フロイトの「原因論」は、現在の行動は「過去の原因」(トラウマなど)によって決定されるものだと考える点に違いがあります。
アドラー心理学の「目的論」とは、人間の行動や感情は基本的に、過去の原因や環境によって起きるのではなく、何らかの目的を達成しようとするために個人が起こすのだ、と考える立場です。例えば子どもが不適切な行動をする場合、目的論の立場では、過去の出来事や環境が子どもに不適切な行動を行わせると考えるのではなく、その行動には子どもにとって何らかの重要な目的があると考えます。
フロイトの精神分析に代表される「原因論」では、現在の問題など人間行動全般を、過去の経験、特に幼少期の経験をめぐる内面的な無意識の葛藤などを原因とするといったように、機械論的にとらえます。それに対してアドラー心理学では、「目的論」に基づいて、人間行動全般は有機体としての個人が、意識的あるいは無意識的に定めた仮想的目標を達成するための動きである、すなわち、その個人にとっての相対的マイナスの位置から相対的プラスの位置に向かうための運動だと強調します。
なおアドラー心理学は、過去の出来事や環境の影響を完全に否定するわけではありません。成長過程における身近な人間との葛藤がライフスタイル形成に影響するなど、過去の出来事の間接的な影響を認めています。また強いストレスへの生理的反応としてPTSD等の急性または慢性的な症状が現れることや、発達障害による行動特性が子どもの行動に様々な傾向性を与えることなどについても然りです。アドラー心理学はそうした先天的、後天的な影響にも充分注意が必要だとしながらも、なおかつ、個人の人生は仮想的目標に向かう個人自身の主体的選択によって決まると考える、「やわらかい決定論」の立場に立ちます。
