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トラウマ・原因論の否定について
アドラー心理学は、強い生理的ストレスが脳の生物学的変化やトラウマ記憶に影響を与え、後遺症を残す可能性を認めています。また現在のライフスタイルは過去に形成されたものであり、したがってその時点の経験が間接的に影響している点も認めます。なお、緊急的・慢性的な心理的危機を引き起こしているトラウマ事態そのものは、アドラー心理学ではなく心理専門職の介入が優先されるべき領域と考えます。
アドラー心理学が否定するのはトラウマに関する決定論的なフロイトの見解であって、過去の影響を完全に無視するものではありません。強い生理的ストレスが脳の生物学的変化やトラウマ記憶の特殊な処理への影響を招き、後遺症を残す可能性は認めています。そもそもPTSDに関する論文を世界に先駆けて1943年の時点で示したのは、他ならぬアドラーの娘のアレクサンドラ・アドラーなのです。
また、アドラー心理学の臨床理論から考えても、人が現在用いているライフスタイルは過去のいずれかの時点で概ね無意識的に作られたものですから、その時点での他者との葛藤などの経験は、間接的には、現在にも影響を与え続けているということができます。そうした環境とそこからの影響をどのように活かすかを現在の本人が主体的に決断し、それらを使用していると捉えるのがアドラー心理学の立場です。
なお、ある一回性の出来事がトラウマ事態として緊急的ないし慢性的な心理的危機を引き起こしている場合は、一般的にアドラー心理学による治療の適応範囲にはありません。その場合『危機介入』の専門職など心理専門職の方の介入が優先されます。
