ターラー成就法

 「ターラー成就法」の前半部を紹介する。ほんとうはこの前にすべての経文に共通の導入部がある。その部分は、この経文に独特のものでなくて、チベット語の経文ならどれにでもくっついている一般的な文章だ。それはまた機会があれば紹介することにして、今日は本格的に「ターラー成就法」がはじまってからの部分だ。ただし、長いので、前半部だけにする。気分が良ければ後日に後半部をご紹介する。

【帰依と発心】

南無|仏法僧の本体なる仏母|われら帰依して菩提心発さん|
(3回繰り返す)

 「仏母」というのはターラー如来のことで、観音菩薩でも阿弥陀仏でもなくて、ターラー菩薩が教主であることを示している。

【供物を捧げる】

OM A BĪGHANAN TA KRITTA HŪM PHAT|
OM SVABHĀVA SHUDDHA SARVA DHARMA SVABHĀVA SHUDDHO’ HAM

四方の神と縁ある霊らとに|宝の器に供物の雲捧ぐ|
害心捨てて利楽を成ずべし|BHŪTA GATTSHA|

 「四方の神」というのは仏教以外の聖霊たちのことだろう。「霊」も同様で、仏教以外の天地の霊のことだと思う。「宝の器に供物の雲」というのは、実物があればそれを意味するが、実物のないときはイメージでこしらえる。「害心捨てて」というのは、それらの神々はわれわれ人間に害心があると、それに反応するので、まず人間が一切の害心を捨てて、平静な心でつきあう決心をすることを意味しているのだろう。

【自身が本尊になる観想】

自身は聖母で白き胸中の|光は十方照らす護輪なり|
BADZRA RAKSHA RAKSHA|

ふたたび白光十方土を照らし|仏母と諸仏と諸菩薩招き寄せ|
敬礼内外秘密の供養して|懺悔し善行随喜し利生請い|
長生願い菩提に回向して|福田融け入り衆生は楽を得て|
諸苦を離れて不偏の平等を|空性の境に密厳浄土あり|
宮殿ありて宝玉ちりばめて|木々と睡蓮(ウツパラ)宝鬘美しく|
その中央に蓮月宝座あり|TĀM 字が光りて二境を利益して|
われは真白く輝く如意輪母|右は施願で左は白蓮を|
結跏し相好備えて五光燃え|八つの宝と五つの衣まとい|
頭上の阿弥陀の三処に OM ĀH HŪM|心中白き TĀM より光いで|
密厳土より相同・灌頂尊|招きて無二の灌頂印されん|
DZA HŪM BAM HO| ABHISHEKATE SAMAYA SHRĪYE HŪM|

 ここから行者自身がターラー如来に変身する。この瞑想の前半部ではターラー如来その人が主役だ。胸の真ん中に光の輪がある。そこから空間を照らしだし、その光明のなかに諸仏諸菩薩を招き寄せる。主人公はあくまでターラー如来だ。「内」の供養と「外」の供養と「秘密」の供養をする。そして自分が犯した悪行を懺悔し善行を随喜して生命を生かすことを願い、長生きを願って究極の菩提に廻向する。ターラー菩薩の善行によって衆生は楽を得て、諸々の苦を離れて「かたよりのない」平等を獲得する。「空性」の世界に密厳浄土という名の浄土が作られ、宮殿があって宝玉が散りばめられ、木々も蓮華も宝の髪飾りも美しい。その中央に蓮の形の月の宝座がある。TAM字が光って二境(なんだろうね、勉強しなくては)を利益する。私は真白く輝く如意輪母で、右手は施願の印で左手は白蓮をもち、脚を組んで如来の相好を供えて五つの光が燃えさかり、八つの宝と五種の絹をまとい、頭上の阿弥陀の三処には OM AH HUM が書かれ、心臓の白い TAM から光が出て、密厳土より相同尊や灌頂尊を招き、無二の灌頂を印される。

【八供養】

OM BADZRA ARGHAM PĀDYAM PUSPE DHŪPE ĀLOKE GHANDHE
NEVIDYE SHABDA PRATITTSHA SVĀHĀ|

【ターラー菩薩讃】

天と非天が冠で|蓮の御足を頂きて|
すべての苦より救う母|ターラー仏母に頂礼す|

 天人と非天人(ということは阿修羅なんだろう)が冠でターラー仏母の足をいただいて、すべての苦から救われる母、ターラー菩薩に頂礼をする。

【如意輪の観想】

仏母の胸に白き輪がありて|中に TĀM 字と左右に OM と HĀ|
われか所修の名前と長命呪|八輻右旋し前に八白字|
光は迷悟の動静威神力|集めて融け入り長寿と智慧とを得|
外輪三重母音は右旋して|子音は左旋し縁起呪(イェダルマ)右旋する|
転ずる光は白・黄・赤・青・緑|茶色が体を満たして幕となり|
中には睡蓮(ウツパラ)新たに花開き|四業と生命吉祥力起こる|

OM BASŪMATĪ SHRĪYE SVĀHĀ|OM BADZRA A TSANDRAYE SVĀHĀ
(七回唱えて数珠に息を吹きかけよ)

OM TĀRE TUTTĀRE TŪRE MAMA ĀYUJNĀNA PUNYE PUSTIM KŪRŪ SVĀHĀ|
(無数回繰り返す)

 ターラー仏母の胸に白い輪があって、なかに TAM 字と左右に OM とHA がある。私の師匠の名前と長生きするようにという呪文の八つの輻が右旋し前に八つの白い文字がある。光は迷いと悟りの動きと静まりの威神力を集めて融け入り長寿と智慧とを得、外輪三重母音は右旋して子音は左遷し縁起寿は右旋する。転じる光は白・黄・赤・青・緑・茶色が身体を満たして幕となり、なかには睡蓮あらたに花開き。四つの業と生命吉祥力が起こる。
 ここでマントラを数百回ないし数千回繰り返す。

【供物を捧げる】

空なる宝器の中なるささげもの|仏母に捧げる五欲の供物なり|
上師は長寿し教えは広がりて|施主も衆生も長寿を得ることを|

 前半部の終了のために、小さなコーダがついている。ここから後半部のマントラの次へジャンプすることも不可能ではないが、そんなに急がないなら後半部もちゃんとやった方が効果があると思う。