共同の課題

 アドラー心理学に「気に入らない代替案をしりぞけて、より気に入った代替案を選ぶ」という操作がある。たとえば、目の前にあるお菓子を食べたいが、母親が「それはダメよ」と言う。そのとき「ただ諦める」というだけでなくて、「代わりに別の案を選ぶ」という案を採用することにする。たとえば、「別のお菓子を食べる」かもしれないし、「お菓子は諦めてお茶を呑む」かもしれないし、「お菓子なりお茶なりを口から入れるのは諦めて玩具で遊ぶ」かもしれない。それらのアイデアを並べてみて、害がないかどうかを確認する。「害あり」とか「害なし」とか判定するわけだ。

 「害あり」と親子双方で確認すれば、そのアイデアは失効して、使われなくなる。あるアイデアについて「害なし」と親子双方で確認すれば、そのアイデアは有効と認められて、使われるかもしれない。一方が(親でもよいし子でもよい)が有害と考えれば、そのアイデアは失効する。このようにして、いままでのアイデアと違うアイデアを採用する。このようなアイデアを「共同の課題」という。

 これって口で言うと簡単なんだけれど、実際にやってみるとけっこう面倒かもしれない。けれども、その面倒な手続きでもって「心」が磨かれて、「共同の課題」を作りだすのが上手になる。「共同の課題」ができる前は親も子も不満だったが、「共同の課題」ができてしまえば親にも子にも不満がなくなる。アドラー心理学の親子関係の目標の第一段階がこのレヴェルだ。