ICASSIの一週目は今日が最終日だ。
午前中のアンシア先生のクラスでは、早期回想とメタファー(比喩)を使ったスーパヴィジョンのデモを見せていただいた。内容は個人情報になるので詳しくは書けないが、とてつもなく素晴らしかった。
早期回想の使い方は、アンシア先生ご自身は「これは私のやり方」とおっしゃっていたが、要点は我々が教わったものとそう変わらないように思った。だが、最後に助言を一つするときに、メタファーが使われて、これが本当に素晴らしかった。スーパーヴィジョンを通して、スーパーバイズを受ける人(スーパーバイジー)がクライエントをよりよく援助できるようにする、と書けば、それはそうだよね、というだけのことなのだが、今回アンシア先生はメタファーを使って、スーパーバイジーとそのクライエントの間に起きていることを、そっとスーパーバイジーに伝え、その解決法も同時に示す、という技を見せてくださったのだ。もちろん、技だけでなく姿勢も、アドラー心理学の治療者の持つオーラそのものから感じ取れた。アドラー心理学の援助の底力をつぶさに見せていただいたようで、感動してしまった。野田先生のカウンセリングを観たときと同じような感動だった。
アンシア先生のデモは12年前にも実は見ている。そのときもすごいと思ったが、その頃私はただアンシア先生の手順だけを追っていたように思う。その頃今回のデモを観てもつかみ取れなかっただろう点を、今回は理解できたと思う。その点も、少しうれしかった。
さすがにスーパーヴィジョンのクラスだけあって、専門家ばかり6人のグループだった。少人数だがそれだけに落ち着いた雰囲気で集中できたしわからないところも質問しやすかった。親密でとてもよいグループだった。
午後のエヴァ・ドライカース先生の「職場のアドラー心理学」クラスも、とてもよいグループだった。
メンバーが職場での問題をパソコンの中でオンラインでつながっているエヴァ先生に向かってシェアする。グループメンバーもそれを聞いている。エヴァ先生がいくつか質問をした後でグループメンバーに「あなた方が彼/彼女の立場だったらどうしますか? ひとりずつ考えを言ってちょうだい」といわれる。そして、ひとりずつ、その状況をどう考えるか、その立場だったらどうするか、解決策などを発表する。事例を出した人はグループのみんなの発言を聞いて、どれか採用できそうなものを選んだり、思いついたりしたことを発表する。最後に「この事例から何を学んだか」を一人一人発表する。
「エピソード分析」のように構造化されたワークというよりは、ブレインストーミング的に解決策を出し合って、できそうなことを見つけるタイプのワークだった。メンバーはアイルランド、ドイツ、中国、イスラエル、日本から集まった6~7人だったが、不思議なことに、みな国も職場も違うのに、一人一人が事例提供者の状況について考えや思いつく解決策を言うと、事例提供者は「ああ、この考え方はいいな」とか「この方法をやってみよう」と、何かできそうなことを見つけられるのだ。文化や習慣が違うからこそ違う視点でのものの見方ややり方が出てくるところもあるのだとも思う。
一つ印象に残ったのは、今日の事例だった。思想的な考え方が違う人と同じ職場で違う立場で仕事をしている、という事例(状況)だったのだが、思想的(多少政治的)な話題で、私はどうしたらいいのか考えをまとめきることができなかったし、ほかのメンバーも考えをまとめにくそうだった。多分そのためだろう、エヴァ先生がこのクラスではじめてアドヴァイスをされた。それはこういうことだった。「まず、個人的な問題(personal issue)と理論的道徳的な問題(theoretical or moral issue)を別けて考えなさい。」
個人的な問題というのはつまり、ライフスタイルのことのようだ。つまり、自分の優越目標や劣等の位置の私的意味づけ、優越目標を達成するためにその人が好んで使っている方法など、ライフスタイル周辺のことらしい。理論的道徳的な問題というのは、職場のシステムや、イデオロギーに関する点、などである。(ここは少し理解が難しかったので、しばらくぶら下げてみようと思う。)
この事例は事例提供者の国だけでなく、今、世界的に起きている、人々の思想的な違いからくる諸問題とつながっているようだ。なるほど、このように思想が違う相手の思想を変えることはできないし、だからといってそういう相手ともアドレリアンとしては対立するよりもできるかぎり協力したい。思想的な違いそのものに関してはいかんともしがたいところがあるが、相手のどの行動が自分のライフスタイルのどのあたりに引っかかってくるのかを考えたら、何かできることが見つかるかもしれない、と思った。野田先生が以前、「嫌いな人とうまくやっていくには?」と基礎講座で質問をされたときに「その人のどういう行動が自分の私的感覚のどこにどういうふうに触っているのかを考えてみると何かできることが見つかることがある」と答えておられたことを思い出した。
明日はICASSI主催のバス旅行に参加する。アイルランドにある5000年前の古墳を、中に入って観れるガイド付きのツアーらしい。ちょっと怖いが楽しみでもある。お天気だといいな。
ゆうこ