協奏曲

 妻は朝から用事があって出かけ、夜になるころまで帰ってこなかった。妻がいないといないで、それなりにする用事はある。今日は、なにはともあれ音楽を聴くことにした。

 モーツァルトの『クラリネット協奏曲』をヨルグ・ヴィドマンという若いクラリネット奏者が独奏で、フーク・ヴォルフという指揮者が伴奏指揮で演奏するDVD(かな。インターネットで供給されている)を聴いたりしていた。オーケストラはフランクフルト放送交響楽団だ。もともと「まとまり」のいい音楽とはちょっと言えないのだが、それをいっそう奔放に演奏するので、なかなか華やかに美しかった。作曲家自身が聴いたら怒り出すかもしれないけどね。

 クラシック音楽はある長さの楽章がいくつかつながってひとつの曲ができている。おのおのの楽章のテーマは関係しあっていたりいなかったりするが、深いところでつながりがあるのだと、私などは思っている。それを演奏者がなんとなく結びつけて演奏する。その結びつきが強すぎると曲は作曲家が書いた以上にひろがらない。かといって作曲家の意向を無視して演奏すると演奏家の音楽になってしまう。そのあたりにある「こつ」があるのだと思う。

 ともあれ、ヴィドマンの演奏は、たぶんちょっと「いきすぎ」で、聴衆によっては「散漫」に聞こえるかもしれない。そのあたりを「ああでもない、こうでもない」と聞けるようになると、聴衆として一人前に達しかけているのかな。