ドライカースの4つの目標(2)

 ドライカースが言う「不適切な行動の4つの目標」は斬新なアイデアだ。ドライカースよりも前に誰かが書いていたかもしれないが、ドライカースの独創かもしれない。すくなくともアドラー心理学の中ではドライカースの独創だったということになっているし、私もそれでいいんじゃないかなと思っている。

 4つの目標のおのおのに、その原因となるできごとがくっついているし、またその結末となるできごともくっついている。アドラー心理学の因果論の面白さは、原因があって、現在の事象があって、結末がある、という3段階で話が進んで行くことだ。たとえば「注目関心を引く」のはどうしてかというと、注目関心を引いてほしいという思いが先にあって「原因」になっており、本来望んだ方法では注目関心が引けないので欲求不満に陥ってその不満の解消のために「現在の事象」があり、それでも親が欲求をわかってくれないことに対して行動が選択されて親の不満を導き出すという結末がある。この「構文」は、どんな場合も共通しているので、ここをちゃんと理解しておくと、現在の子供の欲求不満にもとづく行動に反応しないで、もっと底の方にある「本当の」欲求不満に対応することができるようになり、子供の欲求不満を解消し不適切な行動をしなくてよくすることができる。

 これはもっとも程度の軽い「注目関心を引く」という程度の目標に関してなので、親がちょっと注意すれば抜け出すことができる。「権力争いをする」という段階でも、親はもうすこし根性を入れて対応しないといけないが、なんとか親子だけで問題を解決できるだろうと思われる。もっとも、時間もかかるし工夫も要る。

 問題はその次で、子供の行動の目的が「復讐」になってしまっているときだ。そういうときにどうするかは面倒なので次回以後に説明することにする。一般的な話をすれば、「権力争いをする」までは『パセージ』が対応できる範囲だけれど、「復讐」は『パセージ』のような「型にはまった」対応では間に合わなくなっていることが多い。だから『パセージ』的集団学習ではなくて、カウンセラーと親との個別の相談をしなければ解決できないことが多い。

 問題は、親が子供の問題で相談にやってきたとき、親子関係の「病理」がどのレベルまで進んでいるかだ。実際の臨床では、面倒なので、「注目関心を引く」あるいは「権力争いをする」のが目的だと思って話を始める。そうしてひととおりやってみて、それでダメなら「復讐」だと考えて個別カウンセリングをはじめる。これはいい方法で、結局いちばん短い時間で問題が解決できることになる。