協力的ライフスタイル(6)

 クライエントが本気で神経症的であっても、アドラー心理学の目から見るとたいしたことはない。というか、そもそもクライエントは最初から「飛んで」いない。そこでカウンセラーは、なんらかの方法で「飛んだ」視野から問題を定義しなおす。クライエントがそれに乗ってくれば、あとは簡単な作業だ。その時点では、クライエントはすっかり目を回しているので、カウンセラーがていねいに話をすればそれに乗ってくる。これでカウンセリングは終りだ。それでも10回とか15回とかの時間はかかる。それより短くはならない。まあ、それはしょうがない。長い人生の間やり続けてきた「間違い」をただすのだから、数ヶ月はかかるわさ。

 アドラー心理学はライフスタイルのことを考える。ライフスタイルを無視するアドラー心理学はありえない。私について言えば(誰について言っても同じかもしれないが)、子供時代は自分のライフスタイルを育てることに夢中だった。たぶん高校生くらいにほぼ目鼻がついて、あとは手直しでやってきた。しかし、その方法ではちゃんとしたライフスタイルを持てなかった人も出る。そういう人は治療を受けるしかない。治療に来る人は、世間の普通の考え方では育てなかった人だ。だから、世間一般と違う養育法を使う。さまざまの方法があるのかもしれないが、アドラーが使ったのは「足りないところを見つけ出して補う」というやりかたで、これはとても楽に性格矯正ができる。私はこういう仕事をして暮らしてきた。