アドラー心理学では、すべての行動や背景にあるライフスタイルには概ね意識されない「目的」があると考えますが、自分ひとりでそれを探るのは非常に困難です。そのため、他者の視点も介在するカウンセリングやグループワークなどで、具体的なエピソードからアドラー心理学の理論と臨床技法に基づいて分析を行い、もし必要ならばより建設的な目的を見つけ出して、それに向けて勇気づけを行います。
アドラー心理学では、すべての行動には、たとえ本人に自覚がなくても何らかの「目的」があると考えます。ひとつひとつの行動においてもそうですし、ライフスタイル(個人のものの見方や行動パターンの全体)も与えられた環境に本人がどのような意味を与えてどのように使用するかという、人生の早期における無意識的な選択のうえに成り立っているため、そこにもやはり何らかの「目的」が織り込まれているのです。
ご質問はそうした自分の行動の目的を、自分で見つけ出すにはどうするか、というご主旨かと思いますが、結論から申し上げますと、自分自身で見つけ出すことは非常に困難です。人の行動の大半は習慣として行われており、どのような目的で行っているかを意識することはあまりありません。習慣に逆らって自覚的に行動するときは別ですが、見つけ出したいのはそのような例外的な目的というより、普段あたり前に行動しているときの目的を含む、ご自身全体に一貫する「目的」ではないでしょうか。そうしたものを見つけるとなると、それには人間行動への深い理解と特殊な手順が必要となります。
人の行動というものは、その人固有のものの見方に裏付けられています。行動の目的に気がつくとは、その人ならではのものの見方を探り、それに気がつくことでもあります。しかし、自分で自分のものの見方を見ようとしても、なにしろそのときも「自分固有のものの見方」を通してそれを見ているのですから、ちょうど色のついたガラス越しに同じ色を見ようとするのと同じで、なかなかその特徴を掴むことができません。たとえ自分の周りの他人には一目瞭然でも、自分だけは、それがどういったものか分かりにくいのです。
そのため、そうした理解のためには、他者の視点を経由して探るほうが正確な答を得やすくなります。ここにカウンセリングやグループワークの意味がある、といえます。アドラー心理学のカウンセラーによるカウンセリングや、エピソード分析を学ぶグループワークでは、クライアントの実際のエピソードをもとに、アドラー心理学の理論と臨床技法に基づいて、そこでの本人の感情の動きや行動のパターンを分析し、背景にあるその人固有のものの見方や目的(仮想的目標)を、あたたかな受容的な雰囲気のなかでクライアントとともに誠実に探求します。そしてもし必要があれば、ご本人と周囲にとってより建設的といえる新しい目的(目標)を見つけ出して、その方向へと勇気づけを行うのです。
