アドラー心理学についてよく見られるご質問と、それぞれへの私たちの見解をQ&A形式で簡単にまとめました。皆さまの率直な疑問にお答えするため、アドラー心理学に批判的なご質問や、誤解に基づくと思われるご質問も、あえてそのまま掲載しています。内容はさらに網羅的に充実させたいと考えております。
なお、各項目についてより踏み込んだ回答をお求めの場合、あるいはより分かりやすい説明をご希望の場合は、よろしければ『AIJアドラー心理学基礎講座』の受講をご検討ください。
現代社会とアドラー心理学
アドラー心理学を学ぶことで、自己理解が深まります。人間関係において「相互尊敬」「相互信頼」「協力」「目標の一致」「勇気づけ」「葛藤解決」などを学ぶことを通じて、自分の人生を主体的に切り開き社会と調和した生き方について知ることができます。
アドラー心理学を学ぶことで期待できる個人の変化は多岐にわたります。
まず、周りの人との関係において、相手と協力的な関係になるには自分はどうしたらよいかを知ることができます。人間関係は、例えば子育てや家族関係、教師や保育士など子どもに関わる方の人間関係、職場の人間関係などで、困りごとや悩みについて解決に向け、実際に起きた「エピソード」を基に学ぶことができます。
自己理解が深まり、自分の行動や感情の背後にある目的や自分自身が大事にしている価値観に気づくことができ、相手と協力できる目標を見つけることができるようになります。これにより、実践を重ねていくうちに、不適切な行動のパターンを抜け出して、より建設的な生き方を選び取る力が養われます。
また対人関係において、相手を尊敬し信頼し協力し目標の一致をとることや葛藤の解決方法などを学ぶことで、競合的な関係から協力的な関係に変容し、不必要な摩擦や悩みが軽減されるでしょう。さらに、「共同体感覚」を学び「勇気づけ」を実践することで、自分自身や周囲の人とともに人間的成長が得られるかもしれません。例えばアドラー育児を学び、親子で話し合い、親子で一緒に成長するように。
総じて、自分の人生を主体的に切り開き、社会と調和した生き方を実現するための知恵と勇気が得られるでしょう。
アドラー心理学は、他者との優劣を競うのではなく、個々の違いを認めながらも、人としての価値は平等(equal)であるという立場に立ちます。他者との比較から自己の成長と人々への貢献へと視点を移し、寛容さと建設的な対話を育むその姿勢は、現代の生きづらさを乗り越える示唆を与えます。
アドラー心理学は、現代の生きづらさに対するアンチテーゼであるとともに、建設的な生き方への処方箋でもあります。
まず、アドラー心理学でいう「平等(equal)」とは、「誰もが同じ(same)」であることではありません。そうではなくて、「それぞれの違い」を認めながらも、「人としての価値は平等(equal)」と考えるのが、アドラー心理学のいう「平等」です。体格や能力、文化、価値観などがひとりひとり違うのは当たり前であり、それらによって、人としての価値が決まるわけではありません。こうした考え方に基づくことで私たちは、「人と同じでなければならない」「人より優れていなければならない」という思い込みを捨てることができます。なおこれはお互いの違いのみを強調して、ひとりひとりを引き離し、孤立させようとするものではありません。異なる能力、体格、価値観などを持つ者同士が共存し協力しあうためにこそ、私たちはお互いを対等な人間として尊敬し理解しようとするのです。
またアドラー心理学は、自分と違う意見や価値観に出会ったとき、直ちにそれを「間違い」だと決めつけるのではなく、「そういう考え方もある」と受け入れる寛容な姿勢を育みます。これは、人間関係の摩擦を減らし、建設的な対話を可能にします。ただしこの寛容は、他者への寛容を認めない姿勢や考え方までを認めるものではありません。アドラー心理学は「不寛容」に対しては「不寛容」なのです。これは昨今の虚無主義的な風潮と、アドラー心理学を明確に分かつ点ともいえるでしょう。
そしてアドラー心理学では、たとえ競合的な社会のなかであっても、他者との比較や争いに明け暮れるのではなく、仲間同士のお互いの成長や、人々が暮らす社会への貢献を大切に考えます。これは努力を否定するものではなく、破壊的な競争ではない、社会に対して建設的な貢献の道を、それぞれが見つけることを意味するのです。これらは、現実離れした理想論だと批判されるかもしれません。しかし、現実(ザイン sein)だけを見ていては社会は良くなりません。アドラーのように、人間が協力し、調和して生きるという理想(ゾルレン sollen)を掲げ続けることが、より良い未来を創造する原動力になるのです。
アドラー心理学では職場の人間関係を「仕事のタスク」と呼び、比較的扱いやすいと考えます。具体的な状況やエピソードを聴いた上で個別の対応策を検討します。
アドラー心理学では、個人をめぐるすべての対人関係を「愛のタスク」「交友のタスク」「仕事のタスク」の3つに分類します。一般に「愛のタスク」と「交友のタスク」は一生にわたって継続するものですが、職場での対人関係は、ふつうそこまで長続きしません。このような永続しない対人関係を「仕事のタスク」と呼びます。「仕事のタスク」は人格的なふれあいを前提としませんので、濃密な関係である「愛のタスク」などに比べると、比較的扱いやすい課題と言うことができます。
とはいえ、たとえ永続しない人間関係であっても、同僚や上司・部下の方との人間関係が良好であれば、それにこしたことはありません。ご質問が広いため具体的なアドバイスを申し上げることは難しいですが、アドラー心理学のカウンセリングでは、まず丁寧にお仕事の内容や職場の状況、組織における役割などをお聴きし、その上で相手の方との具体的なエピソードをお聴かせいただきます。具体的なやりとりを伺ってはじめて、個別の対応策・代替案を考えていくことができます。
Staff List
企画・編集:川尻信一(AIJ事務局長)
執筆:大竹優子・中井亜由美・久保田由紀子・野田文子(以上4名AIJ心理療法士)
監修:大竹優子(アドラー心理学指導者)
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